Sink 2 (バンブー・コミックス)

Sink 2 (バンブー・コミックス)


「これは、私の怖いものではない」と思う。
SOIL(マンガ)やCURE(映画)に共通するものなのだが、
「なんだか解らない他者が、平和な生活、平和な自分を浸食し、奇妙な超常現象が起こり続ける不吉さ」
というものに、恐怖感を持てない。
むしろ、こういう「日常に舞い降りる不吉さ」を描き出す物語に、幾らかの不快感すら感じるんだ。


私が恐怖しているのは、突然襲い来る人間の暴力、何も間違えなかったのに大事な人と会えなくなること、年をとっていくと言うこと。
突然、地球外生命体みたいな「他者」が、人間の中に潜り込んで生活して、それによってある日突然カマイタチみたいなものに襲われ、死んだことに気付かないうちに死んでしまう  なんて物語は、全く恐怖ではない。
むしろ、私は、それを望んでいたのではないか。
これを望まない彼らは、どれだけ幸せに生きているというのだろう。
「私は、レールに従って生きて、社会と合わせて生きて、精一杯頑張ったのに、どうして幸せになれないの?本当の私って何なの?この世界に意味とかあるの?人間って汚い生き物だよね」
みたいな物語にイライラする。どうしてだろう。いつからだろう。常に死にたい心地がするなんて、当然のこと過ぎて。


私たちの不安、私たちの恐怖。
それは、リヴァーズエッジの中で河原に打ち棄てられた死体であり、カエル君をぶちのめしたミミズ君であり、終わりのない日常であり、喪失だ。
生きたいように生きていない、本当の自分じゃないから、不満なんじゃない。
不満もないけれど、生きているか死んでいるか解らなくなって、誰とでもすれ違うだけしか出来なくて、喪失し続けてしまうから、孤独。