ピアニスト [DVD]

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この行き場のない欲望と来たら。
確かに、この手の母親との確執であるとか、それによって屈折した欲望だとか、あるにはあるの知っているのだけれど、それはあまりに秘密にされていたことなので、男の人である監督が知っているということに驚くよ。
妄想に妄想を重ねて、そのくせに実際に起これば拒絶する。何もリアリティを持っていない、自ら自己完結してるくせに屈折した欲望の中で生きてるのなんて、あまりにリアル。屈折した欲望を持ってるという鬱屈を抱えているような気がしているその自意識過剰な感じも。
殴られたいけど、殴られたら痛い。殴られたいって妄想するのは、必ずしも彼女がその自意識で飾り立てているような変態行為だとはいえず、殴られてもまだ殴られたいって言うとちょっと話は変わってくるんだけど、結局彼女は妄想で完結しているだけなのだから、絶対に後者ではないのだよね。
年をとって、心も体も醜く、悪意的な存在である主人公は、もはや劇中で何かの「化け物」的な様相を見せる。
だけれど、それは、完全に他者であり、その異質性が不気味であるような「関係のない」化け物ではなく、嫌悪感を与えつつも、自らがそれに変貌してしまうことを想像してしまうからこそ恐れてしまうような類の、化け物なのだ。