うなぎ [DVD]

うなぎ [DVD]


今村昌平。97年カンヌパルムドール
味がある日本映画っぽい映画だなぁ。
役所広司は本当に良い役者だと常々思う。
映像的にも、うなぎを見つめてるシーンとか、まだ薄い夜明けの光の中で川釣りする彼を橋で待つ女性とか、鮮烈なカラーではないけれども残る。


アマゾンのレビュー見てたら「浮気した妻を殺して罪の意識が薄いのは、フェミニズムに反する」みたいなのがあってひっくり返りそうになる。
好きな人に、裏切られて悲しいのに、フェミニズムとかないよなぁ。
明らかに、「悪いこと」をしたのに「間違っていた」と思えないことって、たくさんたくさんあるよね。


東京物語 [VHS]

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初小津。
名作と名高いけれど、昭和28年の作品だから、流石に古っぽくて、教養としては良いけど楽しめはしないだろうなぁ、と思ってたんだけど、大間違い。
そうかぁ、この染み入る感じは、時間を経ても古くならないのか。
広島から東京まで上京するのに、20時間とかかかった時代に、お祖父さんとお祖母さんが子供達に会うために本当に久しぶりに上京してくる話。
主演の笠智衆はとても抑えた演技をするのだけれど、彼が悲しいシーンには悲しくなってしまうのだ。
そう、彼は「悲しい」のを演技で表現しているのではなくて、彼の「悲しみ」は、あまりに私たちに身に覚えがある「悲しみ」過ぎて(昭和28年なのに!)、それに同調して悲しくなっているのだ。


原節子の役柄がとても好きだ。
最近、自分に悲しいことがあったり自分に嬉しいことがあった時よりも、誰かが誰かに優しくされているのを見たときに泣き出してしまいそうになる。
あまりそういうことがあるのを信じていないからだろうか。
とんでもない、の時に、なんだかもうわけがわからないけど私は死ぬほど悲しいよ、って思ったのだ。
私は、私が狡い人間だと思うよ。だから、誰か優しい人間がいることで、悲しくなるのかも知れない。


「いいえぇ」と彼女が何回も言う。
口に出して言ってみる。とても彼女の言うように綺麗には響かない。
原節子の「いいえぇ」と笠智衆の「ありがと」が絶妙すぎて、これを訳して世界中の人が見ていると言うことに違和感を感じるくらいだ。